11月28日
昨晩は南京虫にやられた。無性に身体がかゆかった。全くついてないぜ。 今日はまず「左営蓮池タン」へ行く。どこかで以前見たことのありそうな、 典型的な中華的多重の塔が2本、池の真ん中にそびえ立っている。 そして塔の入り口は、それぞれ巨大な虎と龍の口になっていた。 童心にもどって、「ギャー食われる!」と叫びながら塔の中に入る。 コンクリート製のその塔は、外観の感激とは裏腹に内部はどうってことなかった。 上からの景色は良かったが、どことなく人工的で、それほど格別なものではなかった。 それですぐさま港に行って、高雄市街の対岸の「旗津半島」へ連絡船で渡ってみる。 「海だ! 船だ!」 ここは高雄港である。 昨日見た、たくさんの大型船舶の合間を小型フェリーは摺り抜けて進む。 結構いろんな国からの船が停泊していた。さすが世界一の港だ。
![]() |
短い往復の船旅を楽しむと、すぐにバスターミナルに向かう。
大急ぎで焼きそばを食い、オレンジジュースを胃に注ぎ込んでから長距離バスに乗る。忙しい旅である。
「桓春」へまず行き、そこからバスを乗り換えて台湾最南端の「墾丁海浜公園」へとやって来た。
バスは、ここのリゾート最大のホテルである、巨大な「シーザー大飯店」を横目に見ながら通り過ぎると、
車掌のおねーさんは、親切にもバス停のないYHのまん前で降ろしてくれた。
ここのYHは、伝統的な中華風庶民建築の造りである。
殺風景なこの建物の中にいると、どこからか辮髪の中国人が現れてきそうな錯覚に陥ってしまう。
長距電話で帰りの飛行機の再確認を、苦労してなんとか取り終えると、急に嬉しくなって海に飛び出した。
ここには、やはりもう1時間程早く来るべきだったかなあ。 やはりトロピカルな海はいい。
だが、そこは白い砂浜、ではなくてデコボコの岩石海岸だった。
どの岩もマシンガンで打ち貫かれたような、蜂の巣状の小さな穴だらけだ。
よく見ると、中にレキが一杯入っていた。
左側には、ピストルの弾丸を立てた様な大きな岩山が聳えて見える。
海に沈む夕日を眺めながら海岸に沿って道を歩いていく。
夕日は美しく沈んでいき、青かった海はしだいに灰色に変わる。
どんどんと歩いて行き、そろそろ引き返そうかなと思っていたら、
いつのまにか周りが見たことのある風景になっていた。
さらに進んでいくと、さっきまで居たYHと似たような建物が現れた。
ずいぶん似たような建物があるんだなあと不思議に思ったが、
さすがに、全く同じ看板が立っている地点にやって来て、
自分が真直ぐ歩いてきたのに何故かまたもとの場所に戻っている事にようやく気が付いた。
狐につままれたような、嘘のような出来事で信じられなかったが、どうやらこれは事実のようだ。
何故なら、今こうして実際に元いたYHの自分の部屋で、
自分の荷物から取り出してこうして日記を書いているのだから。
まあ、「さすが歴史の長い中国だけに、こういう事もあるのか」と思い、あまり深く考えないことにしよう。
![]() |
夕食では、YHの食堂で同席した台北からの新婚さん達と仲良くなった。
今日も大勢で中華料理の楽しい晩餐である。
彼らから教えてもらったのだが、どうやらここは新婚旅行のメッカだそうだ。
そういえば若いカップルが多いことに気が付く。日本で言えば昔の「宮崎」に相当するのだろうか?
その他にも、 旅の話や日本の芸能人の話なんかで盛り上がった。
明日の「花蓮」への行き方も詳しく教えてもらった。
花蓮に行くには「台東」を経由するが、台東まででもバスを3度ほど乗り換えなければならないと言う。
結構めんどくさそうだ。
食後もう一度、一人で海岸へ散歩に出る。外はもう真っ暗だった。
街灯もない誰もいない、ただ真っ暗闇の海岸に、転ばないように降りていく。
ちょうど豪華なシーザーホテルの真下の岩場だ。
真っ暗闇の向こうからは、恐いくらいに凄まじい大音響をあげて、大波の音が水飛沫とともに迫って来る。全く何も見えないだけに一層恐怖感が高まる。
ちょっとビビリそうになったが勇気を絞ってじっと堪える。
そして真っ暗闇の中、腹に響く大波とシーザーホテルとに挟まれる位置にある岩の上に立って俺は思った。
波のような強い男でありたいと。そしていつかはシーザーのような男になりたいと。