8th DAY




11月30日

 今日も早起きだ。天気のよい日の早朝は本当に気持ちが良い。窓の外では、太極拳やジャズダンスをしている。日本のラジオ体操に相当する朝の営みであろう。厳めしい中国門の傍でやっているので、結構みんな様になっているように見えるのは気のせいか? 花蓮のバスターミナルへ行くと、「タロコ渓谷」へのバスは9:30しかなかったので、1時間程街をぶらつく。少し寒かったので、市場で白と黒のまだらのセーターを買った。海辺にも出てみた。昨日の墾丁の海とは違った雰囲気だ。海の色がどことなく濃い気がした。遠くに真赤な中華建築が見えて、青い海とのコントラストが美しく目に焼きついた。

 バスでタロコへ行く。噂以上に物凄い渓谷である。何年もの歳月と何人もの犠牲者によって建設されたという縦貫道路はまさに「凄い」の一言だった。河が削った100メートル以上ある絶壁の、ほぼ真中あたりで岩を削りとおして道が続いている。すぐ真下は岩を侵食した清流が流れている。ここの渓谷の岩はほとんどが大理石で、清流は大理石を磨き上げているためか青く澄んでいた。はじめは「今虎」で降りて歩いていこうと考えていたのだが、バスの運ちゃんが俺のリクエストを忘れていて、結局終点の「天祥」まで来てしまう。でも結果的には、天祥の食堂で腹ごしらえが出来たので良かった。

「九曲洞」まで再びバスに乗せてもらい、そこから歩く。清流に削られて磨かれた、巨大な大理石の壁が目の前に連続する。ダイナミックだが、実に滑らかできれいな岩肌だ。なんだか小人になって、大理石の転がる水槽の中に入れられた感じがした。川の水は本当に青白く、誰かが大理石の研磨財かバスクリンでも入れているのかと思うほどだった。途中で日本の団体観光客に出会い、写真を1枚撮ってもらう。

 2キロ程歩いて再びさっきのバスに乗る。このバスの運チャンとはなかなか縁があったようで、いろいろと面倒も良く見てくれた。これから台北に行くというと、花蓮手前の「新城」の駅で降ろしてくれた。ここから急行列車に乗る。隣の席は、小さい子供ずれのおばさんだった。初めは胡散臭く感じた子供達も、しだいに可愛く思えてきたから不思議である。汽車の中で寿司と弁当とウメの干物を買う。少々煩かった隣の男の子には、アメをやったらしばらくおとなしくなった。おばさんと話したり子供と遊んだり、結構楽しい台湾最後の汽車旅となった。
 6:20頃、ようやく台湾一周を成し遂げて、久々の台北に戻ってきた。外はもう暗かった。バスでYHに行くと、今日は満室でダメだとか言われた。「冗談じゃねぃ、ちゃんと予約してあるんでぃ!」と言うと、何度も何度も時間をかけて調べてやっとのこと見つけてくれた。すぐに外に飛び出して、士林の夜市に飯を食いに行く。相変わらずにぎやかな街をぶらついて宿に戻る。YHは混んでるだけあって、今日は相部屋だった。同室の人は、日本人の同じ大学四年生だった。経済学部の人で、香港に行ってから次に台湾の様子を見に来たと言う。明日は韓国に行くらしい。まるで玉突きのようなアジアNIEs巡り旅だな。いずれにしてもアジアに眼を付けるとは目ざといことよ。さあ、俺の台湾の旅ももうあと僅か。パッと残った金を使って華々しく引き上げるとするか。


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国際理解の旅8